今さら聞けない時計用語~クロノメーターとは? COSCとは?~
日々時計に触れていると、その装飾や構造をじっくり見る機会もありますよね。
そんな中で、文字盤に“CHRONOMETER”という文字が刻まれているのを目にしたことがあると思います。
耳にしたことはあるけれど、クロノメーターって…何だろう…?
説明しろと言われると難しい気もします。
今回はそんな、クロノメーターについて見ていきます。
クロノメーターの歴史
クロノメーターの歴史は18世紀に遡ります。
1735年に大工のジョン・ハリソンが船上で使用する振り子を持たない船舶用時計「マリンクロノメーター」を製作。
海上での正確な航法が可能となりました。以降マリンクロノメーターの量産化にあたり、1776年に規格が生まれ、検定を実施したことで「クロノメーター検定」が誕生することとなります。
“腕時計”の精度検定が始まるのは1870年代。
アメリカで高精度な時計の量産が進み、その対抗策としてスイス時計は高精度化が進みました。
欧州諸国で高精度の時計が増えたことで、評価を付ける天文台コンクールが行われるようになり、精度の規格化ができてきます。
このコンクール仕様に開発されたムーブメントが、後に市販品に活かされるようになります。
その後、1951年には一般時計を検定する、時計歩度公認検定局(B.O.)が設立。1973年にはスイス公認クロノメーター検定協会(C.O.S.C.)へと組織変更となり、 1965年に国際標準化機構(ISO)でクロノメーター規格が議論され、1976年に現在のクロノメーター規格が制定されました。
クロノメーターとは
クロノメーターとは、スイス公認クロノメーター協会【通称COSC:コスク(The Contrôle Officiel Suisse des Chronomètre)】が規定する、ムーブメントがどれだけ正確かという精度規格になります。
1973年、前身の検定機関を引き継ぎ、新たに設立されたCOSC。
機械式・クォーツにかかわらず、スイス製時計を対象に精度検定を行うこの機関では、
様々な環境下のもと、15日間にも渡って精度をチェックし、その基準を満たした物のみが「クロノメーター」となります。
高い精度と品質を保証する称号のようなものですね。
しかし、合格するムーブメントの割合は約3%。非常に厳しい基準であることが分かります。
精度検定の内容
気になる精度検定の内容は
・垂直、水平など5つの姿勢差かつ3つの温度下に置き、1日にどれくらい時間がズレるかをチェック。
・1日のズレ(日差)が-4秒~+6秒以内であれば合格。
通常の自動巻き時計が日差±20秒程度は許容範囲内といわれるのを考えると、非常に高い精度が条件になってきます。
認められた時計にだけに与えられる称号
検査に合格した時計だけに「クロノメーター」の称号が与えられます。個体ごとに検査を受けるので、同じモデルの時計でも合格するものと不合格になるものがあります。この難関を突破した貴重な時計1本につき1つのクロノメーター証明書が発行され各メーカーは独自の証明書を作成し、付属されます。
認定時計は、規則正しく正確な時刻を誇りISOに規定された誤差内に収まる精度が保証されるのです。
“クロノメーター”のつく別規格
クロノメーターを名乗っているものの、クロノメーター( C.O.S.C. )とは別規格のものがあります。
マスタークロノメーター
クロノメーターの認定を受けた後、さらにスイス連邦計量・認定局(METAS)が定めた8つのテストを受け、2つの規格に認定される最高水準の精度、耐磁性を備えた性能を有します。
ロレックス 高精度クロノメーター
2015年よりスタートした、ロレックス社独自の検査基準です。ムーブメントは、クロノメーターの認定を受けたものを使用する事が前提であり、更に自社内で行う厳しい一連の検査をパスした時計に与えられる称号。実用的な時計としても高い評価を受けています。
ドイツクロノメーター
ドイツ・クロノメーターは グラスヒュッテ天文台で行われる検定。基本的にはスイス・クロノメーターと同じような検査基準ですが、ドイツクロノメーターはケーシングされた完成品で行います。海洋気象台によるクロノメーターコンクールが始まりと言われているそうです。
ブザンソン国立天文台クロノメーター
フランスのブザンソン天文台が規格する精度検定。 スイス・クロノメーターの3倍コストが掛かるそうな…。その理由としては、テスト内容は基本的にクロノメーターに準じているものの、手作業など伝統的な手法を用いているため、高コストとなっています。
いかがでしたか?
知っているようで知らないクロノメーターについてでした。
実際にスイス公認クロノメーター協会の公式HPを覗いてみると、試験内容など細かに記載されていました。
https://www.cosc.swiss/
良ければ覗いてみてください(^^)
では、本日は中場のブログでした。