針が一周しない時計!?ヴァシュロンコンスタンタン メルカトール(43050/000J-17)を紹介
こんにちは、中野ブロードウェイの時計店「れんず」です。
ある日、いつものように数々の時計が入荷されました。
店頭に並べる前に検品を……と思い段ボールを開け、ひとつ手に取ってみるとびっくり。
おいおいおいおい。そういうのもアリなんだ????
時計業界にまだ先っちょしかはいっていない新入社員の私は、それはもう驚きました。見てください。
え? やっば。
針って文字盤の真ん中についてなくてもいいんですね。
しかもくるくる回らなくてもいいんですね。動き方としては時計というよりむしろワイパーのよう。
私の中の時計ランドはまだまだ鎖国しているも同然のようです。
いやそれにしてもやっば。なにこの時計??? まて、時計か??? なんかの擬態型じゃないのか???
調べてみました
ヴァシュロンコンスタンタンから発表された、とある方の没後400年記念モデルだそうです。400回忌ってことですね!?
そのある方とは、この時計の商品名にもなっている「メルカトール」さん。
メルカトールって薬の名前みたいですね。メルカゾール的な。
賢明な皆様はこの方が何をした人なのか、もうお察しかもしれません。
しかし私は考えるより早く検索窓に「メルカトール」を叩き込み、Google先生に教えを乞いました。
「メルカトル図法」を作った人だそうです。
なんか聞いたことあります、メルカトル図法。あれですよね、海を渡る際に使う地図用の図法。
そうです。この文字盤に描かれているのはメルカトルさんが描いた地図を再現したもの。なんともお洒落なことをしますね!
そしてこの針。「レトログラード」と呼ばれる機構を使用したこの針は、コンパスをイメージしたものだそうです。
地図を作る際に使う円を描く道具の方なのか、航海には欠かせない方位磁針の方なのか。
どちらにせよ素敵なデザインですよね。
参考:https://www.vacheron-constantin.com/jp/en/maison/heritage/iconic-watches.html
レトログラード
レトロなグラードン、これってつまりゲンシカイキ……?
そんなオメガルビーなロールプレイングゲームのことを連想しましたが、これは「レトログラード」です。
意味は「逆行」。坂本真綾さんの美しい歌声が聞こえてきそうです。それは逆光ですね。
もっと寄って見てみましょう。
300年後の人類がこれを見て「時計だ」と分かるのかどうか、ちょっと興味あります。
この機構、文字通り一定まで針が進むとスタート地点まで逆行するのです。すごい。
一般的な機械式時計は巻かれたゼンマイが解けていく力でくるくると回っているのですが、「一定のところまで進むと勝手に戻っていく」。う~~ん、すごい。
腕に乗るこの小さなケースの中にそんな仕掛けが詰まっているんですよね。
しかもこのメルカトールに関しては二針分も。すげ~~!
ますます機械式時計の沼にハマっていきそうです。
小惑星メルカトル
やや話が時計から逸れますが、こちらのメルカトルさん、小惑星の名前にもなっています。
小惑星とは、主に火星と木星の間を回る小さな惑星たちのこと。
初めの方は見つけた小惑星に世界の神話に出てくる神様の名前などを付けていたようですが、それも有限。
次第に偉人の名前やその星の発見者の名前を付けられるようになっていきました。
大航海時代の中、彼が生み出したこの大きな発明を称え、歴史と共に星空にも名前を刻むこととなったのですね。素敵!
出典:https://ssd.jpl.nasa.gov/tools/sbdb_lookup.html#/?sstr=Mercator&view=VOPD
こちらのお時計、掲載してすぐに買われていったので、残念ながら現在は在庫がない状態なのですが(2022年9月/執筆時点での在庫状況です)、納得の二文字に尽きますね。すごい人を称えた、すごい時計。
ぜひともまたお目にかかりたいものです!
この記事を書いた人→NY