こんにちは。中野の時計店【れんず】です。
只今、時計の構造について勉強中。
いつか、機械式時計を分解して中の構造を覗いてみたいみたいなぁと思っています。
腕時計のロマンがつまった沢山の複雑機構。
中でも、
『パーペチュアルカレンダー』と『トゥールビヨン』、『ミニッツリピーター』に『スプリットセコンド・クロノグラフ』
こちらの4つは、伝統的な複雑機構を象徴するものかと。
搭載モデルのスゴさをもっと理解すべく、それぞれの仕組みをまとめてみました。
今回は、ます『パーペチュアルカレンダー』と『トゥールビヨン』についてみていきましょう。
パーペチュアルカレンダー
~時計が動いている限り歴調整が不要~
1981年頃、IWCで時計技師のリーダーを務めていたクルト・クラウスが開発しました。
日付、曜日、西暦、ムーンフェイズを2499年まで文字盤上に表示できる機械式カレンダーです。
月の大(31日)、小(30日、28日)も閏歴の2月29日も、時計が自動で判断し正確に表示してくれます。
カレンダー調整不要だから、ペーパチュアル(永久)カレンダーと呼ばれています。
しかし、閏歴には、100年と1000周期でイレギュラーが起こるため
100年ごとに修正が必要になります。
現在パーペチュアルカレンダーを搭載した時計は、西暦2100年まで対応のものが多く、
これ以降2200年、2300年のタイミングで手作業の調整が必要になるそうです。
この機構を得意とするのは、IWC
ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー・トゥールビヨン
Source : https://www.iwc.com/jp/ja/watch-collections/portugieser/iw504505-portugieser-perpetual-calendar-tourbillon.html
キーパーツとなるのは、48ヶ月カム。
その名の通り、48ヶ月=4年で1周します。
周囲に刻まれた48の溝の深さの違いで、閏年を含む4年分の月の大小を記憶させている造りです。
レバーの先が溝に落ちた動きの大小に応じて、スネイルカムを1~4歯分押して進めます。
48ヶ月カムは、機械式メモリー装置なのです。
IWCの運命を好転させるきっかけとなった、クルト・クラウスが設計したこの機構
Source : https://www.iwc.com/jp/ja/articles/experiences/putting-eternity-on-your-wrist.html
パーペチュアルカレンダーの誕生以来、IWCは継続的に研究を続け少しずつ修正を加えています。
日付と月をデジタル式で表示するバージョンも開発しました。
この機構は、「ダ・ヴィンチ」「ポルトギーゼ」「インヂュニア」「アクアタイマー」の各コレクションにも搭載されています。
さらなる発展形として、ダブルムーンフェイズ表示付きのモデルも登場しました。これには、南半球から見た月の形状も合わせて表示されるそうな。
こうした革新はすべて、不可能に挑戦した男、クルト・クラウスの強い信念、発明の才、そして粘り強さなくしては実現し得なかったでしょう。
トゥールビヨン
~重力の方向を平均させる、回転する調速機構~
懐中時計や腕時計は、着用時に必ず姿勢差が生じて、
かかる重力の方向が変わります。
姿勢差とは、時計の向きやポジションの変化により、ムーブメントにかかる重力の方向が違ってくることで生じる、
時計の誤差のことです。
ヒゲゼンマイが重力方向の変化によって規則正しい伸縮を行わなくなるのです。
このことが、精度に影響してしまうと気づいた
フランス人時計師アブラアム=ルイ・ブレゲが考案したのが、トゥールビヨンです。
トゥールビヨンを発明した時期ははっきりしないようですが、
1801年6月26日に特許を取得しています。
重力の変化に最も影響を受ける脱進調速機一式を、キャリッジ(ケージ=篭)と呼ばれるパーツに格納し、
キャリッジごと回転させることで、姿勢差によって変わる重力の方向を平均化させ、
姿勢差を解消しようとブルゲは考えました。
通常ゼンマイの駆動力は、いくつかの歯車を経てガンギ車に伝えられ、
アンクルを動かし、テンプを振動させています。
※詳しくは別で書きたいと思います。
対してトゥールビヨンでは、駆動力はキャリッジの回転に使われています。
トゥールビヨンの動作原理
ANGELUS:U10 トゥールビヨン・ルミエール
Source :https://www.webchronos.net/brand/1/product/12398/
固定された歯車(四番車)があり、上にガンギ車・アンクル・テンプをまとめたキャリッジがのっています。
四番車は固定されているので、中心の軸のみが回転するようになっていて、
上部のキャリッジと連動しており、キャリッジが回転します。
キャリッジの回転とともにガンギ車も回転し、
自らも駆動してアンクルとテンプを動かしているのです。
Source : http://www.wur-japan.com/kikai/tour.htm
ざっくりですが、以上がトゥールビヨンの動作原理です。
常に動く脱進機とテンプを収めて、スムーズに回転させるためには、完璧な重量バランスが求められますね。
重力の影響を打ち消せることが、トゥールビヨンの最大のメリットです。
それ故に、ポケットの中で長時間かつ任意の姿勢となってしまう懐中時計においては、
クォーツ時計が発明されるまでは、精度を追求するために有効な機構だったといえるでしょう。
以上、『パーペチュアルカレンダー』『トゥールビヨン』について、
中場が書かせていただきました。
続きもおつきあいください。
では、また。